和食ダイニングバー人気はいつまで続く?

近年レストランを利用していて感じることは、物販店と同様に、勝ち組、負け組がはっきり別れ、繁盛しているレストランと閑古鳥が鳴いているレストランに二極化していることです。通常レストランを開店する場合、プレオープンを1〜2ヶ月やって(この時期は割引券などを配って固定客確保に努めます。)お客の反応を調べてから、正式にグランドオープンするという手続きを取ります。このように慎重に事を運ばないと、どうなるかわからないというのが、近年の新規オープンのレストランの厳しい現実のようです。六本木などのように流行の激しい場所では、グランドオープン後、半年程度で店仕舞いしてしまうレストランもあります。そんな厳しいレストラン業界にあって、着実に増えているレストランが、和食ダイニングバーと呼ばれる業態のレストランです。

衛生機器のTOTOが銀座地区の容積率緩和に伴い、自社ショールームのビルを壊して、2001年7月に竣工した、銀座通り沿いの全館飲食店のビル、『GINZA GREEN』は、開業当時、和食ダイニングバーと呼べる業態のレストランがなんと11フロア中、6フロアも占めていました。(現在はテナントは入れ代わっています。現在のテナントはこちらを参照)それぞれテーマとする料理とお酒は多少異なりますが、どの店も和食とお酒を中心にしたレストラン&バーです。
 B1F    町家酒房DEN・・・創作和食+洋酒
         <経営>サントリーの関連会社で、主にダイニングバーを展開する(株)ミュープランニングアンドオペレーターズ

 4F     松玄 凛   ・・・蕎麦+日本酒・洋酒
         <経営>恵比寿、麻布十番、六本木などで寿司、蕎麦店を展開する、(株)ピューターズ

 5F     ICHIZ  ・・・寿司+日本酒・洋酒
         <経営>寿司チェーンを展開する(株)にっぱん

 6F     房’S    ・・・創作和食他+ワイン・洋酒
         <経営>下田ビューホテル、居酒屋などを展開する(株)丸山商事

 10・11F (右下写真)・・・創作和食・エスニック+日本酒・洋酒
         <経営>サントリーの関連会社で、いろいろな業態の飲食店を展開する(株)ダイナック

※  は銀座3丁目の十字屋ビル3Fにも店(この店も有名な杉本貴志氏がインテリアデザインを担当)があります。
『GINZA GREEN』の和食ダイニングバー の店内(11Fの厨房付近)

このビルの場合、
3F カリフォルニアキュイジーヌ NELL’S KITCHEN
(居酒屋『えん』を経営する(株)ビー・ワイ・オーの経営)

7F CHINESE 胡同 MANDARIN
(『紅虎餃子房』で有名な際コーポレーション(株)の経営)

8F 韓国摘草料理 HAN GA WI(ハンガウィ)
(学習塾『栄光ゼミナール』で有名な(株)栄光の飲食部門、二期倶楽部の経営)

9F イタリアン IL PINOLO(イル ピノーロ)
(イタリアン、チャイニーズなどのレストランを展開する(株)スティルフーズの経営 ユニマットキャラバン(株)に売却)

1・2Fはドトールコーヒーの経営するカフェです。

となっていて、現在人気のある分野の飲食店をすべて揃えたような飲食店ビルです。
フレンチがビストロのようなレストランを含めて1軒もないのは象徴的です。一般の人にとってフレンチの魅力がダウンしているのは否めないのかもしれません。かって何度も利用し、銀座で老舗のカジュアルフレンチレストランだった『レザンドール』もついに閉店してしまいました。

『重たい料理』→『軽くて健康的なイメージの料理』、『かしこまった雰囲気』→『カジュアルな雰囲気』という時代の流れが、和食ダイニングバーの興隆に一役買っています。「居酒屋」以上、「会席」未満という微妙な位置付けの和食ダイニングバーですが、価格的にも中級クラスのイタリアンやフレンチより、若干安いという絶妙な位置にあります。

おしゃれな和食ダイニングバーの火付け役は、世田谷・三宿から始まった『春秋』と言われています。確かに『春秋』が登場した時は、会席料理、居酒屋、寿司屋、蕎麦屋等々の固定されたジャンルでしか和食が楽しめなかった時代にあって、おしゃれな空間で、創作的な日本料理を自由に選んで楽しめるのは画期的でしたが、最近のように『春秋』を真似した和食ダイニングバーが異常に増えた結果、どこの料理もほどほどに美味しいが、オリジナリティはあまり感じられないし、後々まで印象に残るインテリア・空間も少なくなって、似たり寄ったりで個性がない状況に陥りつつあるように感じます。

和食ダイニングバーに求められる絶対条件は、『バラエティに富んだ創作和食』、『いろいろな種類のお酒の品揃え』、『おしゃれで個性的なインテリア』、『ほどほどの価格』だと思いますが、これだけの条件を揃えただけでは、人気店になるのは難しい時代に入りつつあります。
和食のトレンドは変わりがないと思いますが、プリフィクスを取り入れたり(晴海バサラ)、もっと落ち着いて食事が頂ける雰囲気(居酒屋のように騒々しい店が多い。)、上質なインテリア空間(価格的な制限があるとはいえ、子供騙しのようなインテリアが多く、上質な『和の空間』になっていないものが多い。)、プロとしてのサービス(アルバイトを多用した、マニュアル通りのサービスが多く、ワインやシャンパーニュの温度管理もいいかげんな場合がある。)などの、+アルファが求められる時代になってきたと思います。






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